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どうして胃カメラは苦しいと言われているの?

[2020.05.11]

胃カメラと聞くと、検査の際のつらい経験を思い返されて顔をしかめられる方が大変多いです。それほどまでに口からカメラを挿入する際にこみ上げるあの強い嘔吐感は大変苦しいものです。近年では苦しさを軽減するためのさまざまな取り組みが行われています。自分らしい無理のない検査スタイルを、ぜひこの機会に知っていただければと幸いです。

苦しさの最大の原因はカメラが喉の奥を通過する際に起きる咽頭反射

口からカメラ(スコープ)を挿入するのが一般的な検査方法です。カメラは喉の奥を通過し、食道を通って胃内部に到達します。まさにそのカメラを深く飲み込む瞬間にオエっとえずくような強い吐き気がこみ上げます。これはもともと人体に備わっている防御反応のひとつであり、咽頭反射と呼ばれるものです。体内に異物を取り込まないために体が正常に機能している証拠でもあります。特にカメラが舌根部(舌の一番奥)に触れると強い吐き気をもよおすため、「つらい」「苦しい」と感じやすくなります。
その他、胃の内部を詳細に観察するために胃を膨らましたり伸ばしたりするカメラ操作が必要となりますが、それがときにお腹の張りや不快感を生じさせることがあるため「痛い」と感じられるケースもあります。

咽頭反射は若い方ほど強くなる傾向があります

一般的に咽頭反射は年齢と深く関係しており、若い方ほど敏感に反応しやすいという傾向があります。また、歯ブラシで奥歯を磨く際に同じような強い嘔吐感を生じられる方もいらっしゃいます。そういった方も咽頭反射が強いタイプであると考えられます。

苦しさを軽減するためにさまざまな取り組みを行っています

カメラ挿入時の苦しさを最大限抑えるために、検査を行う医師側においてもさまざまな取り組みを行っています。その工夫を一部ご紹介いたします。

咽頭麻酔

喉の粘膜部に局所的に麻酔薬を噴霧することで咽頭反射を鈍らせる効果があります。個人差もありますが、オエッとなる強い嘔吐感を少し弱めることができます。

静脈麻酔(鎮静剤)

局所麻酔よりも効果があるのは静脈麻酔(鎮静剤)です。点滴で薬を投与され、ウトウトと眠ったような状態になります。咽頭反射が起きることはほとんどなく、反射による激しい体動も起こりにくいために検査がスムーズに進められます。検査精度も向上しやすいというメリットがあります。

経鼻内視鏡

一般的な胃内視鏡検査は口から直径1cmほどのカメラを挿入して行うものですが、近年ではその約半分の直径5~6mm程度のカメラをあわせて取り扱う医療機関も増えてきました。経鼻内視鏡と呼ばれるもので、その名のとおり鼻からカメラを挿入します。舌根部を刺激せず胃までカメラを送ることができるため、つらい咽頭反射が軽減されます。ファイバー素材で柔らかく、鼻腔内の異物感や痛みをそれほど感じることなく胃内部を観察できます。

一番大切なことはご自身が安心して納得できる検査であるかどうか―

検査方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。例えば、口から挿入するタイプの内視鏡は経鼻内視鏡に比べると操作性も高く、画像もハイビジョンで非常にクリアです。組織検査が必要となった場合にも切除のための太い鉗子を使用できるなど、検査を行う医師側にとっても多くのメリットがあります。しかし、実際に検査を受ける側となるみなさんに決して忘れていただきたくないことは、いかにそれが安心して納得できる検査となるかどうかです。命に関わる重大な病気を未然に防ぎ、将来にわたって健康的に安定した毎日を送るためには「これならできる!」と思える自分らしい検査方法を知っておくことはとても重要です。咽頭反射が強い方、過去の経験から胃カメラに対して苦手意識がある方こそ、ぜひ経鼻内視鏡等の新しい検査方法をお試しいただけたらと思います。

これから先の健康を守るために―
ご自身が納得できる検査方法をお選びください

胃カメラの際のあのオエッとなる苦しい感覚は、ほとんどの方が体験されていらっしゃることでしょう。検査を行う私たち医師側としても、患者さんのひどく苦しまれているご様子を目の当たりにすることは大変つらいものです。できるだけ早く検査を終えられるように努力いたしておりますが、本来必要とされるべき検査時間をあえて短縮するということは重大な病変の見落としなど検査精度の低下にもつながりかねない問題となります。まずはご自身にとっての最善の検査方法を知ることが第一です。加えて、検査に対する率直なイメージやご希望を医師までお伝えいただくこともとても重要です。最近では患者さんのそんな素直なお気持ちに寄り添うためのさまざまな検査スタイルをご提案するクリニックも増えてまいりました。ぜひご自身が納得して安心して続けられる検査方法をお選びいただければと思います。

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