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排便後にトイレットペーパーに血がついた。どうする?

[2019.09.04]

排便の際に出血があった場合にはその部位に関わらず注意しなければなりません。痔だと思い込んで放置していたがために、重篤な疾患のサインを見逃してしまうこともあります。決してご自身だけで判断せず、早期に正しい診断を受ける必要があります。

Q.排便時の出血とはどのようなものですか?

A.排便に伴う出血は総じて「排便時出血」と呼ばれます。さらに厳密には「血便」と「下血」の二種類に分かれます。出血部位によって便の色も大きく変化します。例えば、今回のように紙につく程度の場合は鮮血便(真っ赤な血)であることが多く、下部消化管や肛門周辺の比較的出口に近い場所からの出血が疑われます。これは「血便」と呼ばれるものです。一方、真っ黒な色をした便が出ることもあります。こちらは「下血」と呼ばれます。胃や十二指腸などの上部消化管付近での出血が原因であり、長い時間をかけて腸内を通過するうちに血液が酸化して真っ黒な便(黒色便)となって出てくるという特徴があるからです。

Q.出血があった場合に注意すべきこととは?

A.まずは落ち着いて色味、痛みの有無、出血量を確認してみてください。
例えば、今回の質問例を深く掘り下げてみると、『紙には血がついているけれど、便器内にはそれほど出血は見当たらない』といった主訴が汲み取れます。便器内が真っ赤に染まるほどの出血がみられた場合にはかなりの鮮血での出血量が考えられ、「紙についた」といったレベルでは収まらないことがわかります。色味・痛みの有無・出血量の3点を総合して考えると、ある程度の出血部位や原因が推測できます。そのため、排便時に気になる出血があった場合には、その3点をメモして書き留めておくなどしていただければ、実際の診察の際にもとても有益な情報となります。

「色」で出血した部位が絞られる

上でも述べたとおり、出血の色味によって出血部位のおおよその場所が特定できます。肛門に近い場所ほど真っ赤です。一方で胃や十二指腸といった内部の出血になるほど黒色となります。

「痛みの有無」でも出血部位は特定しやすい

肛門から外側にある部位は通常の皮膚です。そのため出血した場合は切り傷同様、痛みを伴います。一方で、腸の粘膜には痛みを感じる神経が通っていません。よって、出血しても痛みを感じることはありません。痛みの有無も出血部位を特定するためには重要な指標のひとつとなります。

出血量にもさまざまなレベルがあります

出血量に関しても部位によってさまざまですが、実際の診察現場で患者さんがよく表現される言葉を例に挙げると「紙につく程度」「ぽたぽたと垂れるかんじ」「シャーっと勢いよく出る」といったさまざまな程度があります。出血頻度も多くなるほどその重症度は高まります。貧血になりやすく、血圧も下がりますので早期の受診が必要となります。

Q.翌日の排便では出血がなかったけれども受診は必要ですか?

A.一度出血があった場合には速やかに診察にお越しください。健康診断などにも便を二日間採取して行う便潜血検査というものがありますが、一日でも引っかかればすぐに内視鏡検査となるほどです。自己判断で様子をうかがうことなく、まずは受診に来ていただければと思います。重篤な疾患のサインである場合もありますので、まずは正しい診察をお受けいただくことが肝心です。

Q.考えられる病にはどのようなものがありますか?

A.多くの場合は痔が関係していると思われますが、中には直腸癌など重大な疾患が隠れている可能性もあります。
排便時の出血は「痔」が原因であることは非常に多いです。痔の有無やどのような痔であるかは肛門鏡を用いて診察すればすぐにわかります。しかし、生命に関わる直腸癌や潰瘍性大腸炎、クローン病や虚血性腸炎などといった重大な病気による出血である可能性も決して否定できません。出血があった場合には詳細な検査を併せて検討することは非常に重要なことです。実際の診療現場でも痔だと思い込まれている方の内視鏡検査うち、約3%に癌が発見されています。大腸癌の前段階となる大腸線種の発見を含めると2人に1人といった非常に高い率となります。実際に痔の治療を行うにあたっても、その出血が内部からのものでないことや、重大な疾患に関わる出血でないことを確認することは、安心して治療に臨むためにもとても大切なことです。腸内をくまなく観察する大腸内視鏡検査に関しては、一般的な人間ドックでも広く扱われている安全な検査ですので主治医にご相談ください。痔の治療は消化器内科などの専門性の高い科での治療をおすすめします。

「紙につく程度」の出血で考えられる痔

切れ痔・出血量の少ないイボ痔など

「シャーと出る」出血で考えられる痔

ある程度育ったイボ痔など

Q.必要となる検査や治療はどのようなものですか?

A.まずは肛門鏡で痔の有無を確認します。必要に応じて、内視鏡を用いて大腸内からの出血の有無を確認することも大切です。
癌などの生命に関わるような重大な病の見落としがないよう、大腸内視鏡検査を加えて腸内を確認することはとても大切なことです。痔であった場合には、主な治療法としてはまずは排便習慣や生活習慣の改善を心がけ、痛みには軟膏薬などで対応します。原因にもよりますが、早期であれば1~2週間程度で症状が改善することが多いです。脱出などの程度がひどい場合には手術が必要です。

Q.痔による出血を改善するにはどうしたらいいですか?

A.食物繊維の多い食事を心がけ、水分をしっかり摂ることが大切です。偏った食事や水分不足は硬い便となり、排出の際に肛門や腸を傷つけやすくなります。肛門付近が切れたり、排便の際に強くいきむことが習慣となると肛門内側の静脈がうっ血してイボ痔にもなりやすくなります。特に切れ痔は繰り返すとイボ痔に進行しやすいため要注意!過度なダイエットや不規則な生活習慣、ストレスなども腸に大きなダメージを与えます。バランスの良い食生活や生活習慣に気を配りながら、食物繊維の多い食品を摂取するなどの工夫が大切です。適度な運動を加えることもより良い改善につながります。その他、トイレの時間を5分以内に抑えるよう意識したり、長時間座った状態や同じ姿勢を維持することを避ける、アルコールや刺激物を控えるといった改善も有効です。

重篤な病気の可能性も大いにある排便時の出血―恥ずかしがらず、まずは早期にご相談ください。

排便時の出血の多くが痔であることは確かです。しかしながら、痔だと思い込まれている患者さんの中には重大な病が隠されている可能性も日々の診療現場にはよくあることです。いつもと違う便が出た、出血を伴った便が出た場合にはすぐにご受診いただければと思います。特に女性は受診をためらわれる方が多く、長く我慢されることでさらに悪化することが多いです。女性は出産による影響で痔になられる方も非常に多いですから、ぜひ恥ずかしがることなく早期にご受診いただければと思います。消化器内科などの専門クリニックではプライバシーへの配慮も意識高く行っておりますので、ぜひ安心してご受診いただければと思います。
痔による出血の場合には、食生活や生活習慣の見直しを図ることも大きな改善が期待できます。手術が必要となる場合にも、今では痛くない注射を用いた治療法もあります。長期にわたり一人で思い悩んでいたり、不安に思うことなくまずはお気軽にご相談いただければと思います。

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