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家族が大腸癌と診断されたけど、自分は大丈夫?

[2019.04.17]

癌の発症には複雑な要因が絡み合っています。多くは散発性ですが、中には癌になりやすい体質を遺伝的に受け継いで発症される方もいらっしゃいます。特に大腸癌は他の癌に比べると遺伝性が高いため、ご家族は留意してください。

Q.大腸癌は遺伝するの?

A.50歳未満で若年発症されたご家族がいる場合には注意してください。
ご家族が癌になられた場合には、ご自身の身体についても不安に思われることでしょう。癌にもさまざまなタイプがあります。多くの場合は生活習慣や環境因子、加齢等といった散発性の発症ではありますが、遺伝による発症があることもまた事実です。懸念されるのはご家族の発症が若年性であったかどうかという点です。特に大腸癌は50歳未満で発症されたご家族がいる場合には注意が必要となります。ただし先に述べた通り、大腸癌のその多くは加齢等の要因が複雑に関係しています。逆に70代や80代などで発症された場合には遺伝によるリスクは低くなりますので、過度に心配される必要はありません。

問診票の家族歴は正確に

問診票にご家族の病歴を記入する欄を見かけたことはありませんか?特に入院を必要とする際にはご家族の病歴を必ず記載していただいています。中でも癌は生活習慣や加齢、遺伝的要素が複合的に関係しています。家族内で癌を発症された方がいる場合には、ご自身のリスクも高まっている可能性が考えられるため、医療者側にとっては決して見逃すことのできない重要な情報です。特にご家族が若年性発症である場合には、できるだけ詳しくご記入いただくことが大切です。

Q.「家族性大腸癌」とはどのような病気ですか?

A.大腸癌全体の2~3割を占めると言われている遺伝因子の強い疾患です。


特に大腸癌において特徴的なのは「家族性大腸癌」です。大腸癌全体における2~3割を占めており、そのうち完全なる遺伝性発症は全体の5%弱です。「家族性」と呼ばれるその名の通り、ご家族は常に食生活や生活習慣を共にしています。食事の欧米化や発癌リスクが指摘されつつある加工肉の過剰摂取、野菜不足や慢性的な運動不足等はご家族内で等しく影響し合っています。そのためご家族が大腸癌と診断された場合には、ご自身の身体も同じように心配されることはひとつ大切な観点です。

家族性大腸癌のうち、遺伝による主な疾患例

家族性大腸腺腫症

大腸内に100個以上ともなる大量のポリープができる病気です。30歳で20%、放置し続けると100%の確率で発癌すると言われています。ポリープの数が多すぎるため全てを切除することは難しく、現在治療法としては20歳代で予防的に大腸を全摘する手術が有効と言われています。ご家族の病歴に家族性大腸腺腫症の方がいらっしゃる場合にはご自身も詳細な検査を加えることが大切です。

リンチ症候群

発癌を抑える遺伝子が変異してしまう病気。50歳未満で大腸癌を発症した方が両親や兄弟、お子さんにあたる場合にはリスクが高まります。発癌率は約50%と言われており、若い頃から遺伝子検査などの詳細な分析を加える必要があります。

Q.遺伝性の癌を早期発見するために必要となる検査とは?

A.遺伝発症率としては、胃癌や食道癌に比べると大腸癌は高いです。早期発見には内視鏡を用いての定期的な観察が有効です。特に遺伝性の大腸癌は十二指腸や胃への合併も大いに考えられるため、胃カメラを用いた詳細な検査も併せて検討する必要があります。

大腸癌は早期発見できれば根治が望めるものです!

若年性発症であっても、大腸癌は早期発見できれば通常の治療法と何ら変わりません。早期癌は内視鏡によって簡単に切除できます。進行癌であっても早期に外科的治療ができれば根治は大いに望めるものです。

Q.普段の生活において気をつけることはありますか?

A.食生活を含めた日常生活の見直しを、ぜひご家族一丸となって取り組んでみてください。
日常的に生活を共にされているご家族が大腸癌を発症された場合には、ご自身の生活習慣も今一度見直すべきタイミングと考えます。特にタバコ、肥満は要注意項目です。ホホ肉などの赤肉やハムやソーセージといった加工肉、過度な飲酒も大腸癌のリスクを高めます。摂取量を控えるなど食習慣の改善に取り組んでみてください。例えば食物繊維を意識して多く摂取すると、自然と肉量を減らすことができます。軽い運動も効果的です。ご家族で改善のためにできることをぜひ一度話し合ってみてください。

Q.心配や不安がある場合にはどこで相談できますか?

A.ご家族内でたまたま一人が癌になられたからと言って、極端に不安になられる必要はありませんが、ご心配であれば一度ご受診いただくことも予防の観点からするととても重要なことです。大腸癌の相談全般や遺伝性大腸癌の一次スクリーニングを行えるクリニックも多くありますし、検便や内視鏡検査といった大腸癌検診も広く実施されています。漠然とした不安を抱えられて過ごされるよりも、一度検査をお受けになられてご自身でしっかりと確認されることは非常に重要なことです。たとえ家族性大腸腺腫症の血縁があったとしても全ての方が発症するとは限りませんし、35歳以上になっても大腸ポリープがなければ発癌リスクはほぼ否定できる段階にまで至ります。不安や心配なお気持ちが強い場合には、まずはお近くのクリニックで検査を受けることをおすすめします。また、国立がん研究センターなどの専門機関には遺伝子相談室もあります。当院からもご紹介できますのでまずはお気軽にご相談ください。

ご家族のみなさんも今一度ご自身の見直しを―

ご家族に若年性大腸癌を患われた方がいる場合やご心配な病気が見つかった際には、ご自身についても詳細な検査を検討することはとても大切なことです。通常、大腸癌の発症率は8%程度と低いものですが、リンチ症候群は50%、家族性大腸腺腫症に至っては100%にまで上昇します。家族性大腸腺腫症は特にポリープがあるだけでは自覚症状が現れないため、内視鏡検査を行った際にたまたま発見されて診断がつくというケースも決して珍しくありません。当院においても一年間に必ず数人は遺伝性の癌を発症されている患者さんに出会います。もちろんご本人へのケアが最優先課題にはなりますが、ご家族のみなさんも今一度ご自身の身体を見直されてみてください。

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